簡単に理解できる呼吸回数の重要性~急変の予兆を見落とさない~

何を急変予測の指標とするのか

患者の急変予測は非常に重要です。

何をもってして、急変(ここでいう急変とは心肺停止です)するかもしれないと予測するかには、様々な指標があります。

近年、バイタルサインの中でも呼吸の評価が急変予測に重要であることが言われています。


このことが言われるようになったのは、医師らが行った研究結果に基づいています。

呼吸の評価というと、様々な指標がありますが、思い浮かぶのは呼吸回数と呼吸様式だと思います。

急変の予兆とされる呼吸の異常は、呼吸回数に焦点が当てられています。

有名な研究として、内科病棟での心肺停止に至った患者さんを対象とした、どのようなバイタルサインが心肺停止を予測していたかを調べたfieselmannらが発表した論文があります。( 1993 Jul;8(7):354-60.Respiratory rate predicts cardiopulmonary arrest for internal medicine inpatients.Fieselmann JF1Hendryx MSHelms CMWakefield DS.)

この研究論文には、頻呼吸(呼吸回数>27回/分)は、脈拍や血圧の異常よりも72時間以内の心肺停止を予兆していたと報告されています。

Scheinらが行ったもう一つの研究があります。( 1990 Dec;98(6):1388-92.Clinical antecedents to in-hospital cardiopulmonary arrest.Schein RM1Hazday NPena MRuben BHSprung CL.)

この研究論文では、入院中に心肺停止となった患者の70%が、心肺停止の8時間以内に呼吸状態の悪化を認めたと報告されています。この時の呼吸回数は29±1回/分であったと書かれています。

この2つの論文より、呼吸回数の増加は急変の予測となり得ると言えます。


一般的な頻呼吸の原因は以下のようなものがあります。

・代謝性アシドーシスの代償・・・体の中の酸性物質が大量に発生し、動脈血のpHが酸性に傾くような病態(代謝性アシドーシス)が起こると、人間は呼吸を使ってこれを正常に保とうとします。具体的には、二酸化炭素をどんどん体内から排出させるために頻呼吸となります。

・酸素を十分に取り込めない時・・・肺の疾患などが原因で、通常の呼吸では十分な酸素が体内に取り込めない時には、呼吸回数を増やして生命を維持しようとします。疾患が原因の場合の頻呼吸は、疾患自体が重症な場合が多いと言われています。

・代謝の亢進・・・発熱や、運動などによって酸素消費量が増えて、二酸化炭素生産量が増える場合、体は呼吸回数を増やして対応します。

・精神面の影響・・・不安や恐怖などのストレッサーがかかると、ストレス反応によって呼吸回数が上昇します。

・脳中枢神経系疾患・・・呼吸を調節している脳に異常が生じると、呼吸回数やパターンなどに変化が生じます。


急変の定義は様々ありますが、近年言われるのは、心肺停止とは急変の中でも最終段階であり、急変の成れの果ての状態と表現されています。

突発的な不整脈などによる心肺停止を除いて、患者はすぐには急変しないと言われています。

よって、いかに急変の初期に気付けるか、予兆を見逃さないかが重要となります。(下図は、患者急変対応コースガイドブック 池上敬一ら著 2008㈱中山書店発刊を元に作成)

体温・脈拍・血圧・SpO2は測定したけど、呼吸回数は・・・?ということを見かけます。

上記の論文や、私の臨床での経験上でも、呼吸回数の観察・評価は重要と言えます。


☆最後までお読みいただきありがとうございます☆

「分かりやすかった」「他にも知りたい」と思ってくださった方は、「重症患者を看るための看護師ノート」に他の項目も色々載せていますので、是非ご覧ください。

 

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