簡単に理解できる心筋梗塞

心筋梗塞のメカニズム

心臓病の中でも、命に関わる危険な心筋梗塞は何故起こるのか?

そして、特徴的な症状や危険因子 についてです。


心臓の働き

心臓の働きは、全身に血液を送り出すポンプとして知られています。人間が生きていくには様々な臓器が働くことが必要です。

脳や腎臓、胃腸や肝臓、体の筋肉などです。これらの臓器が働くにはエネルギーが必要です。エネルギーは血管の中の血液の中に含まれており、臓器は送られてきた血液からエネルギーを受け取ります。

この血液を送るのが、心臓の仕事ですが、心臓自体もエネルギーを必要とします。心臓は他の臓器と違って全てが筋肉で構成されています。この筋肉が縮んだり伸びたりすることで、中にある血液が全身に送られています。

心臓は一日に約10万回も伸びたり縮んだりする運動を行っていますので、エネルギーを必要とします。体中にある全ての血管の長さを足すと、地球二周以上にもなります。

心臓の筋肉(心筋といいます)は絶えず運動していますので、常にエネルギーの供給を必要とします。心臓にエネルギー(酸素と栄養)を供給するのは、冠状動脈という血管です。

冠状動脈と心筋梗塞

その形が心臓を覆う冠(かんむり)のようなので冠状動脈、冠動脈とも呼ばれています(下図参照 Wikipediaより引用)

心筋はこの冠動脈より、エネルギーを供給されて運動していますが、この供給が断たれたときに起こる病気が心筋梗塞です。

供給が断たれる原因は、血管の閉塞です。何らかの原因で血管が詰まることです。

血管が詰まってしまう原因に、血糖値(血液中の砂糖が多い)や、コレストロール値などが高いことがあります。糖やコレステロールが多い血液はドロドロとなり、流れるときに自らの血管の壁を傷つけてしまいます。

血管の壁に傷がつくと、その傷からコレステロールが中に入り込みます。今度はそのコレステロールを処理するために白血球の一種のマクロファージというものが中に入ってコレストロールを食べてそのまま死骸となってそこに残ります。

残った死骸が溜まることでだんだんと盛り上がって、血管の壁にコブを作ります。やがてこのコブは傷がついて破れます。

次に破れた壁を修復するために、血液がかたまりを作ります。この血液のかたまり(血栓)が血管を完全にふさいでしまいます。(下図参照https://medimagery.net/stock/cardiovascular/thrombus.htmより引用)

血管が完全に詰まってしまうと、その先にある心筋には血液が到達しません。この状態を虚血といいます。

エネルギー源が断たれてしまった心筋は、動くことが出来なくなり、やがて腐ってしまいます。これを壊死(えし)といいます。

狭心症と心筋梗塞の違い

心筋梗塞と同じメカニズムで起こる病気に狭心症があります。心筋梗塞との違いは、狭心症では冠動脈は完全には詰まっていませんが、細くなっている状態です。

いわば、心筋梗塞の一歩手前の状態です。狭心症は、狭心発作というものを起こします。これは、冠動脈が細くなっているために、心筋のエネルギーの需要が高まった時、供給が追い付かないために起こります。

例えば、運動をした時に心臓は全身の筋肉にいつもよりも多く血液を送る必要が起こります。心臓は強く動いたり、動く回数を増やして対応するためにエネルギーを多く必要とします。しかし、血管が細い狭心症の状態では、血液を送る量が低下します。

心筋に必要な酸素が行かなければ、血液供給不足(虚血)状態となって痛みが出現します。いわば心臓に起こった筋肉痛が強心発作です。

運動などが発作の原因となって起こる狭心症を労作性狭心症といいます。

心筋梗塞になると何が起こる?

心筋梗塞は非常に恐ろしい病気です。心筋梗塞になると様々な事が起こります。一番重篤なものは、冠動脈の根元が詰まった時などに、心臓の動きが止まったり、重症の不整脈が発生して突然死を起こします。

その他では、虚血となった心筋がもろくなって、破れる(心破裂)こともあります。そのほかにも、心臓の部屋と部屋の扉の役割をしている弁が働かないことで血液が逆流することもあります。血が通わなくなった筋肉は、もろくて破れやすくなります。

その他にも傷んだ心筋が原因で不整脈が起こったり、心臓のポンプ機能が落ちて心不全を起こすこともあります。

このように、心筋梗塞は数ある病気の中でも恐ろしいものです。

心筋梗塞の特徴的な症状とは

典型的な心筋梗塞の症状は、胸が締め付けられるように痛むことです。これを絞扼感といいます。これに加えて特徴的なのが冷汗です。

心筋梗塞を起こした心臓は急激にポンプ機能が低下します。それを補うために、心臓を頑張って動かそうと体の自律神経(交感神経)が過剰に興奮することで、冷汗がでます。

体は冷たいのにじっとりと汗をかいている状態で非常に危険です。

心筋梗塞や狭心症を予防するにはどうすればよい

このように、非常に危険な心臓病を予防するには、危険因子(狭心症や心筋梗塞の原因となる因子)を管理することが必要です。危険因子を挙げます。

・性別(疫学では男性は女性より心筋梗塞になりやすいといわれています)・遺伝的要素(家族が心臓病だと、心臓病になりやすい=家族歴)・喫煙 ・脂質異常症 ・高血糖(糖尿病)・肥満 ・高血圧 ・加齢 ・運動不足 ・慢性的なストレスなどが危険因子といわれています。

 

いずれにしても、日ごろの生活習慣が大切なことが分かります。日頃の生活習慣病が良くないと、積み重なって心筋梗塞のような、恐ろしい生活習慣病を引き起こしてしまいます。

また、危険因子の中には医療機関に行って検査しないと分からないものがあります。

定期検診や健康診断を受けると共に、心配なことがある場合は医療機関を受診しましょう。


☆最後までお読みいただきありがとうございます☆

「分かりやすかった」「他にも知りたい」と思ってくださった方は、「重症患者を看るための看護師ノート」に他の項目も色々載せていますので、是非ご覧ください。