起きてはいけない医療事故は何故起きてしまうのか?
人命に関わるような医療事故は決して起きてはならないものですが、時に重大な医療事故が発生しテレビ等で報じられています。
何故医療事故は起きてしまうのか?
その原因はヒューマンエラーです。
ヒューマンエラーとは、人間が起こした意図しない結果やミスの事です。
ヒューマンエラーは誰でも起こす可能性があります。なぜなら、ミスをしない人間は絶対にいないからです。
人間が行う事には、必ずミスが起こります。ベテランだからミスはしない、エリートはミスをしない訳ではありません。
人間はミスをする生き物なのです。
私はそんなミスはしない。私は優秀だから大丈夫と思っている人は危険です。
本当に優秀な人は、人間はミスをする生き物という事を認め、ミスをしないように何らかの対策をしています。
ミスを防ぐ為の「気を付けなさい」「気合いをいれなさい」というような根性論は効果が無いことが分かってきています。
なぜなら、気を付けて行っている結果ミスが起こっているからです。(あきらかな不注意は除きます)
人間はミスをするということを前提に対策を考える必要があります。
これには、システムを変更する必要があります。
ミスそのものが起こらないようなシステムや、ミスが生じてもそれが患者に届かないようにするシステムです。
とある医療事故の専門化は、医療のリスクマネジメントは欠陥だらけだと指摘しています。また、世の中には安全などない、あるのは危険(リスク)のみ。そのリスクをいかに管理するかが医療事故を減らすことであるとも言っています。
確かに、考えてみれば完璧な安全は存在しません。例えば絶対に安全な乗り物はあるか?と言われると、そんな物はありません。
この世で一番安全な飛行機でもまれに墜落してしまいます。
近年では減りましたが、注射薬の誤投与が起こることがあります。よくあったのが、薬剤が入っている入れ物(アンプルといいます)の外見がよく似ている別の薬剤が同じ場所に置いてあり、これらを間違えてしまうのです。
これをヒューマンエラーの側面から考えてみると、人間は外見がよく似た物が複数あるときに見間違えるという特性があります。
特に経験値が少ない人ほど、このミスは起こりやすくなります。
このミスを防ぐには、「見間違えないように気を付けなさい」では限界があります。
外見が似ているものを同じ場所に置くこと自体が、エラーを起こしやすい環境を作っていることになります。
この場合もシステムの変更が必要です。一番効果的なのは、ミスそのものをなくす対策です。
このミスの原因は、そもそも外見がよく似た薬剤が同じ場所に存在している事が原因です。
対策は、どちから片方の薬剤を置かないようにする事や、配置場所を変える事などです。
他には、こんなことがあります。
患者が睡眠薬を飲んでフラフラして転んで怪我をした。幸い大怪我には至らなかった。
対策として、睡眠薬の種類の変更が行われたとします。しかし薬剤の種類を変えれば、フラフラしないという保証はありません。
有効な対策としては、原因そのものを無くすこと=睡眠薬を飲むこと自体を無くす事です。
どうしたら、睡眠薬を飲まずに眠れるのかに焦点を当てて、患者と話し合い何かトライしてみるのが有効な対策といえます。
医療現場では、ミスが起こった時に個人を責めがちです。「二度とミスを起こさないように気を付けなさい」ではなく、ミスの原因を分析して、システムの変更をする事が有効な対策なのです。
日常生活でも、同じことが言えます。ミスが起こって困ることは、工夫をして対策しておくべきです。
特に疲れていれば、ミスをしやすくなるものです。
例えば忘れ物をしないように、スマホのチェックリストに持ち物を入力して、出掛ける前に確認する。
ごく一般的な対策ですが、これをやるのと、やらないのでは明らかに差が出ます。
人間は誰でもミスをするということを理解し認識していれば、ミスを起こさないような対策が出来ます。
特に寝不足は要注意です。脳のパフォーマンスが低下するために集中力が下がりミスを起こしやすくなります。
看護師の場合、夜勤がこれに当たります。夜勤は集中力が低下するのに加えて、人員が減るためにマンパワーも低下するので、非常に事故が起こりやすい環境の中で仕事をしています。
チェルノブイリの原発事故のように、これまで世界で起こった重大な事故は、未明によく発生しています。
この時間帯は特に集中力が低下する事が分かっています。
もう一つの重要な視点は、ストレスを感じながら働いていないかです。ストレスは集中力を低下させ、ミスを起こす確率を高めます。ミスの原因が「ストレスの反応ではないか」と検討することも非常に重要です。
いずれにせよ、人間はミスをする生き物。ヒューマンエラーは必ず起きることを前提としたリスクマネジメントが必要です。
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